自分は現役のケアマネジャーであり、介護認定調査員の経験もある。
それも踏まえて、この4月から行われる介護保険制度の様々な改正のポイントの中で、「介護認定調査」にも変更点が生じたので、それについて思ったことを書いてみる。
今回の認定調査の大きな変更ポイントは
①介護認定有効期間の上限が24カ月から36カ月に延長
②一定の条件を満たした場合「更新」の申請分のみ、二次判定の介護認定審査会の実施を簡素化できる
③介護度の改善が認められた市町村にはインセンティブ(報酬)が発生する
簡単にだが介護認定の簡単な流れを説明すると、申請には3つの種類がある。
・「新規」:初めて介護認定を受ける場合
・「更新」:すでに介護認定を受けている人が、有効期間が切れる前に更新をする
・「変更」:状態変化などにより、現状の介護度と現在の状態が見合わないと判断できる場合に行う
そしてどのパターンで申請されてもまず「一次判定」というものがある。
これは「主治医意見書」というその人の主治医が、健康状態や身体機能、認知機能などに関して書いている書類。
これに実際に「介護認定調査員」が本人やその家族、施設職員や担当ケアマネ等と面接し聞き取り調査を実施。
この主治医意見書と認定調査の結果をコンピューターが判定した結果が「一次判定」の結果となる。
その次に、各市町村で医療、福祉、介護の有識者が集まり、その一次判定の結果を観ながら最終的な介護度をどうするか話し合って決定するのが介護認定審査会であり「二次判定」と呼ばれている。
考察
①と②については、自分は良い点だと思う。この介護認定には莫大な時間と労力、費用がかけられていることを考えると事務負担を簡素化することは歓迎したい。
ただ個人的には、以前からこの介護認定そのものを止めればいいのではないかと思っている。
この介護認定を何故するのか?結論を言えば「ケアマネに対して、利用者へプランニングできるサービス量を制限させる為」
国の考えとしては「ケアマネに、好きなだけプランニングさせたら無駄にヘルパーとかデイを利用者に使わせるに決まっている!そんな事を許したら財源が持たないじゃないか」少し乱暴かもしれないが、概ねこんな考えがある為介護認定が今も行われている。
ただ考えてもみてほしいのだが、介護保険のトップマネジャーがケアマネジャーだとしたら、医療のトップマネジャーは「医者」になる。
だが医者に対して国は1カ月間で行える医療や薬の処方を制限しているだろうか?これはご存知の通り制限は無く、医者が必要と判断すれば基本的には制限なく診療、検査、薬の処方が行える。
ここで国は「医者はケアマネと違って、そんな無駄なことはしないよ」とは思っていないだろう。事実無駄な診療や薬の処方をしている医者もいる。この辺りは医師会との関係性等が影響している事も考えられる。
ただ、莫大な費用がこの介護認定にかかっていることを考えたら、もう少し別の方法でプランニングへのルールを設けるなどして、この無駄を止めるほうが遥かに財源改善に繋がると自分は以前から考えている。
今回の改正で、大きな影響が出るのが間違いなく③だ。
その理由だが、介護保険の財源というのは、国、都道府県、保険者の市町村がそれぞれお金を出し合っている。そして単純に言うなら、要介護度の重い介護度4や5の人が多い市町村は使われる保険料が多くなる事から、財源が厳しくなる。
国も当然、介護度の重い人が少ない方が財源の負担が軽くなる。そこで国と保険者の市町村(都道府県もだが)、全員にとって良いのが介護度の重い利用者を減らす事。
そこで国は市町村に対して「このミッションを達成すれば、ボーナスをあげるよ」とお金で保険者の市町村をコントロールしようとしているのが今回のインセンティブの発生。市町村からしても財源負担が軽くなる+ボーナス貰えるとなれば、積極的に介護度をなるべく重くならないように調査を行う可能性が高くなる。
その結果、今まで何とかギリギリまでサービスを使うことで生活できていた人達が、不当に介護度が引き上げられる事で、生活が成り立たなくなる人が続出する惨事になりかねない。
そうでなくても、今認定調査の時に現在の状態より大げさめに話をする利用者や家族は大勢いる。皆今の介護度が下がることを恐れているからだ。これはつまり、事実をありのままに語っている人が少ないという事だから、介護認定その物に意味が無い事になる。
今後はより「介護度を改善したい市町村」VS「なんとしてでも現在の介護度を維持したい利用者・家族」のやり取りは現状より酷いものになるだろう。尋問のような態度で詰め寄ったり、勝手な判断で伝えられた状態より軽く記述をする調査員などが増加する懸念がある。利用者サイドも全く事実と異なる状態を平気で伝えるようになり、ただの騙しあい状態になるのではないだろうか?そうなれば、調査をやる意味が本当にあるのか?
だから、自分はこう主張したい!
「介護認定制度はもう止めませんか?」