８月２９日、体操の宮川紗江選手が協会からパワハラを受けたとして告発会見を行った。主な内容としては
①自分のコーチである速見コーチが無期限の登録抹消という処分に納得ができない
②塚原夫婦（夫は体操協会副会長、妻は強化本部長）に呼び出され
・速見コーチが暴力をしたことを認める事
・コーチを自分に変えることを了解する事
・塚原強化本部長が監督を務める朝日生命に所属を変える事
・上記３点を拒否したら、「家族を含めて宗教みたい」と高圧的な態度で、名誉を傷つけるような発言をされた
・従わない場合２０２０年の東京オリンピックに出さないと脅しをかけられた
考察
①についてだが、速見コーチが暴力を用いた指導を行ったことは事実であると宮川選手も認めている。これに関しては本人もコーチをかばうような発言もありつつ「暴力を用いた指導は許されることではないと認識している」と言っている。
ただ、宮川選手は２０２０年の東京オリンピックは小学生の頃から指導してきた速見コーチの元で目指したいと希望しており、それに対していきなり無期限の登録抹消処分は重過ぎると主張。
これに関しては微妙な面がある。暴力をしたコーチに対して何らかの処分が科されるのは当然の対応。そして、宮川選手が速見コーチ以外の指導を受け入れられないというのも依存的すぎるような気はする。
ただ、若いコーチの指導も協会の業務である事を考えるといきなり「一発レッドカード」というのは如何なものだろうか？
例えば、コーチに対して一定期間の謹慎処分の後、適切な指導方法などを再教育した後復帰させる等の道筋があっても良いのではないか？
そうでないと、今後ハラスメント問題が起きる度に「即解雇」になるようなリスクの高い仕事に一体誰が就こうとするのか？
②については全て事実だとすると「宗教発言」と「オリンピックに出さない発言」は権力を行使したパワハラに該当するだろう。
暴力認定とコーチ変更に関しては、協会としての暴力根絶の為と、現時点ですぐにコーチをすることもできない事から仕方ない面があると思う。
ただコーチを塚原強化本部長にする事や、朝日生命への所属に変えるよう半ば強制させるのは違うのではないだろうか・・・？あくまで推測だが、メダルにもっとも近い有力選手を自分達の支配下に置くことで利益を得るのが目的ではないかと思ってしまう。
その後の対応
①塚原副会長
「ほとんどウソ」と宮川選手の会見内容を真っ向から否定。近くプレスリリースや記者会見を開く可能性も示唆した。
今年何度も繰り返されてきたスポーツ界のパワハラ問題。その度に当事者がこのような「逆ギレ対応」をして、結果鎮火がどんどん遅れて、大きな問題に発展していった。
どうしてこれ程学習しないのか？不思議でならない。今は感情的にならず、冷静に対応すべきということがなぜ分からないのか？
１８歳の若い女性が勇気を持ってあのような場で記者会見を開いたのだ。普通に考えて彼女が言っている事が「ほとんどウソ」であるはずがない。（多少は主観が入って事実と異なる部分もあると思うが）
むしろ現時点では、真実がどうかは置いていて「ほとんど事実」と多くの人が捉えるのだ。その現状を正しく認識し、対応できないと大きなリスクにさらされる事になる。
②山本専務理事の対応
記者会見を開いて「協会として、規則に沿って適切に対応しただけだ」と速見コーチの処分についてはコメント。
しかし、塚原夫婦のパワハラに関してはノーコメントとしつつ「協会としては、本人の申し出がない限り何もできない」との事。
単純に「あの会見が申し出とほぼ同義では？」と思った。この対応から協会上層部としてこの問題を積極的に解決していこうとする姿勢がないことがとても残念に感じた。
③具志堅幸司副会長の対応
山本専務理事の会見の後、具志堅副会長が緊急の幹部会議を開き、この問題に対しては協会とは無関係の弁護士を含む第３者委員会を立ち上げ、調査を開始すると発表した。
これ！！世間はこういう常識的な対応を待っていた。この問題に対して現状でどうこう回答するのではなく、きちんと調査してからその結果を発表。問題があったのなら、今後どう改善するのか？被害をおった相手にどのような補償をしていくのか？
こういうまともな人が組織にいて本当に良かったと思う。ただ一方で、幹部クラスの塚原副会長、山本専務理事とは全く違う対応。
これらの事から、協会としてのまとまりの無さ、組織力の低さを感じてしまう。こういう問題に対しては独断専行で動かず、組織としての見解を示すというレベルに、他のスポーツ組織も達してほしいと願う。
今後、この問題がどのような決着を迎えるのか？願わくば互いに和解し、宮川選手が２０２０年の東京オリンピックでメダルが獲れるような環境を早く作ってもらいたいと思う。